交通事故でクルマの損傷が激しい場合、出火して燃えてしまうことがある。あるいは高速道路などを走っていて、クルマから煙が出て、路肩に停車した途端炎が出て、そのまま燃えてしまったというニュースを目にしたことがあるハズだ。
令和元年版の消防白書によれば、車両火災は年間3600件前後起こっている(放火を含む)。単純に言って1日あたり10件程度もあって、日本で起こる火災の1割は車両火災なのだから、想像以上にクルマは燃えているのだ。
自動車メーカーが開発中に行なうクラッシュテストでは、定められた速度でコンクリートウォールやアルミハニカムのバリアに衝突させて、クラッシャブルゾーンの潰れ方やキャビンの変形度合、ドアの開閉可否やダミー人形の損傷といった直接的なダメージのほか、燃料ラインの損傷による燃料漏れの有無といった二次災害につながる危険性についても確認され、最善の仕組みやレイアウトが採られている。
このクラッシュテストによる検証以外にも、自動車メーカーは車両火災に対する対策を施している。すでに車両の保安基準で内装には難燃性が要求されているが、それでも一般的な素材と比べれば燃えにくいだけで、プラスチックやゴム、化繊などは石油由来の製品なのでどうしたって燃えてしまう。シートのクッション材であるスポンジなども非常に燃えやすい。
それでも実際の衝突事故は千差万別、わずかな条件の違いがクルマの損傷を大きく分けることもある。そこで、ここからはクルマが燃える原因と、万が一の車両火災に遭ったらどう対処するべきなのか、述べていくことにしよう。
文/高根英幸
写真/Adobe Stock(Mel Stoutsenberger@Adobe Stock)
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■車両火災の原因は大きく分けて3種類ある
まずイメージされるのは、ガソリンや軽油の燃料やエンジンオイルなど油脂類が原因の火災だ。燃料やオイル漏れの箇所が排気系に近かったり、電装系がショートして付近に燃料漏れなどがあれば引火してしまう。
消防白書によれば、最も多い車両火災の原因は排気系で、全体の16%を占めている。ただし車両火災の半数以上は原因不明もしくは調査中であり、複合的な原因が火元となった可能性は高い。排気系が原因といっても、排気系が直接燃えてしまうのではなく、前述のように燃料漏れやオイル漏れを発火させる火種となるケースは多いだろう。
10年くらい前までのクルマは、三元触媒がフロア前方あたりに取り付けられていることが多く、草むらなど燃えやすいモノが触れると火災の原因になることもあったが、最近のクルマはエンジンのすぐ近くに触媒があり、フロアを通る排気管はそれほど高温にはならないので、以前ほどの危険性はなくなっているハズだ。
日本ではあまりないが、クルマの扱いが比較的雑な東南アジアや中国などでは、商用車などでサイドブレーキの戻し忘れによってブレーキドラムが加熱し、それによってタイヤが燃えて最終的にクルマが全焼してしまうような事故は多数起こっている。
また、残念ながら火災が発生しやすいクルマというのも存在する。燃料系の配管や電装系の配線が劣化してきている旧車は、車両火災のリスクはどうしても高くなる。先日のコルベット炎上事故や、空冷VWの車両火災などはその代表的な例だ。
そもそも燃料供給装置にキャブレターを使っているクルマは、逆火(バックファイア、燃焼室の火炎が吸気ポートを通じてキャブにまで達してしまう現象。アフターファイアとは異なる)が起こると燃料の吹き返しによってエアクリーナー部分にまで炎が達して燃え広がってしまう可能性がある。無用な空吹かしは吹き返しを起こす原因となるので、避けることだ。
新しいクルマでも特殊なレイアウトをもつクルマ、ミッドシップのスポーツカーで燃料や電装などの取り回しが複雑なモデルは、衝突事故を起こした際に車両火災を起こしやすい傾向にあるようだ。それ以前に、燃費の悪いクルマは排ガス中の未燃焼ガスがマフラー出口で燃焼するアフターファイアを起こしやすく、それが原因で車両火災に繋がるケースもある。
レーシングカーのように、高速で走行中のアフターファイアなら燃え移る心配はないが、低速走行や停車中に空吹かしなどでアフターファイアを起こすと、マフラー周辺に燃えやすいモノがあれば燃え移ってしまうことがある。事実、スーパーカーオーナーが周囲から注目を浴びようと空吹かしして、クルマが燃えてしまった投稿動画などはインターネット上で見つけることができる。
燃料系に続いて車両火災の原因となるのは、電装系だ。エンジンの電装系は高電圧電流を使うが、これが火災を起こすことはなく、エンジン車で原因となるのはワイヤーハーネスの劣化やバッテリー周辺のメンテナンス不足が原因でショートや火花を起こし、周辺に燃え移ってしまうモノ。
最近では水害による車両の浸水が問題になっているが、大きく冠水した道路を走ったことで、電装系に水が回り込み、その後腐食などによってショートして火災につながってしまう場合もある。特に冠水した場合塩水が混じるような沿岸沿いの地域などは注意してほしい。
そして意外かも知れないが、室内からも出火することがある。これは陽射しが強い日に、直射日光が当たる部分にライターやスプレー缶など可燃性ガスを含んだモノを置いておくと太陽光によって熱せられて圧力が上昇し、容器を破壊するとともに燃焼して周囲の燃えやすいモノに燃え移ってしまうことがある。そして室内が火元となって車両火災につながってしまうのである。
さらにまれではあるが、エンジンがオーバーヒートを起こすことで火災に発展するケースもある。冷却系やエンジンオイルのメンテナンスを怠っていると、エンジンが高温になり過ぎて壊れるだけでなく、オイルの滲みやハーネスの被覆など燃えやすいモノを自然発火させ、車両火災につながるのだ。
EVはバッテリーから発火することがあるのでは、と思いがちだが、日本においては急速充電でも電力が抑えられていたためその危険性は少なく、車両火災につながった事例は報告されていないようだ。ただし欧米や中国では停車中のEVでも車両火災は起こっているので、今後日本でも起こらないとは言い切れないだろう。
■走行中、火災が発生したらどうするか
ごく初期の火災であれば、消火器を使って火を消し止めることもできる。ただし、それは火元に確実に消火剤を的中させることと、火災の種類に適した消火器を用いる必要がある。
消火器に使われる消火剤には粉末、液体、気体の3種類があり、それぞれ消火能力に異なる特徴がある。ほとんどの火災に対応できるのはABC消火器と呼ばれる粉末タイプだが、粉末タイプは使用するとエンジン内部など細部にまで消火剤が入り込んでしまうので、もし初期消火で火災を食い止められたとしても、その後の処理が大変だ。
気体タイプはCO2を圧縮して充填している消火器で、エンジンルームや室内を消火剤で汚すことはないため、高級車やクラシックカーに積んでいるオーナーも少なくない。ただし電装系が火元であれば、消火能力は低いという弱点がある。コンパクトなタイプでは、噴射時間も短いので、極めて初期の火災にピンポイントで消火できなければ、効果を発揮できない。
クルマに搭載するのなら小型の液体タイプがおすすめだが、一般的には車載用消火器は確実に消火できることを優先してABC消火器をラインナップしているメーカーが多い。
消火器がなければ、エンジンルームからの出火は自分では消しようがないから、ボンネットを開けるのは絶対に避けるべきだ。一気に酸素が入ることで火の手が上がる可能性がある。
走行中にエンジンルームから煙が出たり、焦げ臭いような臭いを感じたら、まずは即座に路肩にクルマを停車させよう。そして貴重品を持ってクルマから急いで脱出することだ。そして火災なのか、別の要因(エンジントラブルやブレーキトラブルなど)なのか判断し、火災であれば自分は安全な場所に避難して、119番にダイヤルして消防車の派遣を依頼しよう。
車両火災に遭ったら、クルマは全損になると覚悟しておいたほうがいい。初期消火に成功して、ボヤで済めば修理して復活することもできるが、そもそも燃えやすいクルマは、その可能性は低い。日頃の点検整備と車内の整理整頓で、車両火災を防ぐよう気を付けるようにしよう。
【画像ギャラリー】車両火災に遭遇した時 どうすればいいのか!? 憶えておきたい3つの対応
October 18, 2020 at 03:00PM
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クルマは案外簡単に燃える!! いざという時に憶えておきたい車両火災の対応方法 - ベストカーWeb
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